古代都市ツボクラ

よく食べ よく眠り よく考える,難ある男二人の備忘録

一つの種が地面に落ちた。その種は根を張り、青々とした二つの葉をつけた。太陽の日差しをめいっぱい受けてたくさんの栄養を蓄えた。その栄養をもとにしてその幼い木は背丈を伸ばし、根をより深く張った。

 

幼い木はくる日もくる日も同じように栄養を蓄え、成長を繰り返し毎日少しずつ違う景色を楽しみに過ごしていた。

 

ある日その幼い木はなにかひんやりした肌触りの良いものが根に触れるのを感じた。ガラスのビー玉を見つけたのだった。幼い木はビー玉の感触を気に入り、ビー玉を包み込むように根を育てていった。毎日変わらずひんやりと心地よい感触を与えてくれるビー玉の方を幼い木は好きになっていき、時に暖かくやさしい日差しを、時に激しく辛い嵐を見せる外の世界に興味を失っていった。

 

それから何年も経ち、その幼い木は幼いという形容詞が似合わなくなるほど立派な木に成長していた。大きな嵐がその木を襲い、いつもより大きな嵐にその木はあっけなく倒れてしまった。露わになったその根は立派な幹に似合わないほど浅い根をしていた。根は大事そうにビー玉を抱えていた。木は光を受けたビー玉がキラキラと美しく輝くのを見て嬉しそうに葉をざわつかせた後、その命を終えた。